小児の感染症とは

小児の感染症イメージ

赤ちゃんは母体から様々な免疫を授かって生まれてきますが、成長と共に減衰していきます。すると次第にいろんな感染症の病原体に感染しやすくなっていきます。小児によく見受けられる感染症は以下の通りです。

インフルエンザ

インフルエンザウイルスに感染し、1~3日の潜伏期間を経てから発症します(感染経路は、飛沫感染、接触感染)。主な症状は、寒気と高い発熱(38度以上)で、倦怠感、関節痛のほか、頭痛、鼻水、咳などの症状もみられます。また小児では肺炎や中耳炎、脳症などの合併症を起こすこともあります。

治療に関してですが、抗ウイルス薬(タミフル、リレンザ 等)の投与があります。ただ同薬は発症から48時間以内に使用することで効果が得られます。なお対症療法として、水分の摂取をこまめにする、熱を下げるために解熱剤を使うといったことも行います。同疾患は症状がみられてから5日以内、熱が下がってから2~3日は学校や保育所は出席できません。

ウイルス性胃腸炎

ウイルスの感染によって引き起こされる胃腸炎です。ウイルスの種類は、ひとつではありません。主なウイルスとしては、ノロウイルスやロタウイルスがあります。他にも多数のウィルスによって起こります。どのウィルスも感染性は強いのが特徴です。ウイルスが含まれた感染者の嘔吐物や便を介し、接触(経口)感染が主な経路となります。治療に関してですが、特効薬はありません。嘔気、嘔吐に関しては制吐薬の坐薬や内服薬を使用し、下痢に対しては整腸剤を使用します。下痢止めは基本的には使用しません。嘔吐や下痢によって脱水症状が起きることもあるので、経口補水液などの水分の十分な摂取が必要です。

ノロウイルスとは

ノロウイルスは感染力が非常に強く、秋から冬の季節に発症しやすいです。主な症状ですが、1~2日の潜伏期間を経て、吐き気・嘔吐、下痢のほか、腹痛、発熱などがみられます。これらの症状は数日間で改善します。

ロタウイルスとは

ロタウイルスは、主に乳幼児(5歳児くらいまで)が発症しやすいウイルス性胃腸炎です。よくみられる症状ですが、1~4日間程度の潜伏期間を経てから、水のような白色の下痢や嘔吐・吐き気や発熱なども見受けられます。この状態が数日~1週間程度続きます。近年、ロタウィルスワクチンの定期接種化に伴い、重症例は減少しています。

ヘルパンギーナ

主にコクサッキーウイルスが原因とされる感染症です(接触糞口感染)。小児(主に5歳以下)に罹患しやすく、夏の季節に発症しやすいです。2~4日ほどの潜伏期間を経て、発熱が見られ、さらに口内の奥の方に水疱がみられます。熱については発症から3日程度で下がります。水疱は潰瘍化し、痛みにより食欲が低下することもあります。

RSウイルス感染症

RSウイルスによって引き起こされる感染症です(感染経路は、飛沫感染や接触感染)。年齢の小さなお子さまや、基礎疾患のある方が罹患すると細気管支炎や肺炎など重篤化することがあります。

5日程度の潜伏期間を経てから発症します。軽度であれば、発熱(微熱)、鼻水、喉の痛み、咳などのいわゆる風邪症状がみられ、1週間程度で回復します。ただ重症化してしまうと、喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼーの呼吸音)、咳がひどい、呼吸困難などがみられるようになります。
基礎疾患のあるお子さま(心疾患、低出生体重児等)では重症化しやすいため、RSウィルスの表面抗原に対するモノクローナル抗体の予防投与を1ヶ月ごとに行います。

おたふくかぜ

正式な疾患名は、流行性耳下腺炎です。ムンプスウイルスが原因となる感染症で、飛沫感染や接触感染が主な経路です。2~3週間の潜伏期間を経てから発症しますが、感染しても症状が出ないケースも全体の3割程度あるとしています。成人で罹患することもありますが、多くは小児で感染することが大半で、主に4~5歳の幼児が発症することが多いです。

よくみられる症状は、唾液腺の腫れと痛みです。そのため、食べたり飲んだりする際に痛みが出ることもあります。発熱もみられることがあります。腫れに関しては、48時間でピークとなりひいていきます。このほか合併症として、精巣炎、無菌性髄膜炎、膵炎、難聴などを併発することもあります。このようなリスクをできるだけ回避すべく、任意ではありますが予防接種もあります。1歳を過ぎたら接種可能なので、受けられることをお勧めします。

みずぼうそう

ヘルペスウイルスの一種である水痘・帯状疱疹ウイルスに感染し、2週間の潜伏期間を経てから発症します。感染力は非常に高く、飛沫感染、空気感染、接触感染が主な経路です。
小児によくみられ9歳までにおおよその方がみずぼうそうに罹患するといわれています。
ただ水痘ワクチンの定期接種化により、乳幼児の水痘は減少していますが定期接種がはじまる前の学童のお子さまは一回接種の方が多く、軽症ですがかかられる方がおられる印象です。

発症すると紅斑、丘疹が発現し、ほどなくして全身に広がるようになります(口内の粘膜や頭部にも)。発疹はすみやかに水疱に変わり、やがてかさぶたになります。発熱(37~38度)もみられるようになりますが3日程度です。しばらく発疹がでるので、水疱、かさぶたが混在します。すべてがかさぶたになるまで1週間程度です。なおかさぶたになるまでは感染力が残っているので、学校や幼稚園、保育園は行けません。
治療については、抗ウイルス薬(アシクロビル 等)や水疱については外用薬を塗布します。

水いぼ

伝染性軟属腫ウイルスに感染することで発症します。小児によくみられる皮膚疾患で、主に夏の季節にプールでビート板や浮き輪を介して感染することが多いといわれています。

直径数㎜程度の大きさで光沢のある半球状の発疹がみられ、中央は少し窪んでいます。痛みやかゆみといった自覚症状は現れません。発症しやすい部位は、腹部や胸、衣服などがこすれやすい、わきの下や肘の内側などです。なお水いぼをつぶすと内容物が出てきて、別の部位や他人にうつるようになります。

免疫がつくなどして自然に治癒することが多いのですが、それまでには、数ヶ月か数年以上の期間が必要とされます。

治療としては特殊なピンセットで取り除いたり、液体窒素による凍結療法治療があります。ただこれは痛みを伴い、全てを完全に取ることは難しく再発することもあります。痛みのない治療としては、ヨクイニンという漢方薬がありますが確実な効果はありません。スキンケアを十分にして掻爬しないようにすることがよいと思われます。

溶連菌感染症

A群β溶連菌と呼ばれる細菌に感染することで発症する感染症です。飛沫感染や接触感染によって感染するとされ、2~5日程度の潜伏期間を経てから発症します。幼児や学童期の小児が罹患しやすいとされますが、成人でも発症することもあります。

主な症状は、発熱(38度以上)、喉の痛み、扁桃腺の腫れをはじめ、全身に発疹や口内の舌に赤いブツブツ(苺舌)のほか、腹痛や嘔吐などを訴えることもあります。
また10日から3週間後に急性腎炎や心炎、関節炎などの続発症をひきおこすため、抗菌薬による除菌が必要です。

治療は抗菌薬(ペニシリン系、セフェム系)による薬物療法が中心となります。その結果、症状が良くなってきたとしても途中で止めることはせず、服用方法は医師の指示に従うようにしてください。

とびひ

正式な疾患名は伝染性膿痂疹で、一般的にはとびひと呼ばれています。原因菌は常在菌でもある黄色ブドウ球菌が多くA群β溶連菌も原因となることがあります。
虫刺されや小さな傷に菌が入り込み感染します。その後は水泡、痂皮となりかゆみも伴います。
掻いたり、触れたりすると菌が散布され、瞬く間に水泡が全身に広がるようになります。この様子というのが火の粉が飛び移って拡大する火事に似ていることから「とびひ」と呼ばれるようになりました。
夏の季節に起きやすく、アトピー性皮膚炎の患者さまは罹患しやすく悪化しやすいという特徴もあります。

治療はまず皮膚を清潔に保つようにします。皮疹に対して抗菌薬軟膏塗布やかゆみの症状が強い場合は、抗ヒスタミン薬を使用していきます。なお病巣が拡大傾向の場合は抗菌薬を内服します。

手足口病

エンテロウイルスもしくはコクサッキーウイルス等に糞口感染によって感染し、2~5日の潜伏期間を経てから発症します。夏の季節に感染しやすく、乳幼児に多いのも特徴です。

主な症状は、手のひらや指、足底、足背、肘、膝、臀部、口の中に小さな水疱がみられます。軽度ですが発熱がみられることがあります。水疱は1週間程度で消えていきます。なお口の中の水疱は痛みを伴い、そのため水分や食事をとりにくくなるので、脱水症状に注意してください。なお稀に合併症(髄膜炎、脳炎等)を発症することもあります。

アデノウイルス

アデノウイルスと呼ばれる病原体に感染することで発症する病気を総称してアデノウイルス感染症と呼ばれます。

同感染症には種類がいくつかあります(咽頭結膜熱、流行性角結膜炎 等)。その中でも幼児や学童期の小児によく見受けられる咽頭結膜熱はプール熱とも呼ばれます。夏の季節に起きやすく、プールの水を介して結膜から感染することもあります。同ウイルスに接触もしくは飛沫感染によって5~7日程度の潜伏期間を経て発症します。発熱(39度前後)のほか、結膜の充血、流涙、目やにのほか、喉に炎症や痛みなども現れます。なお発熱は、3~5日間は続くとされています。
発熱、眼症状などの症状が解消し、2日程度経過するまでは、学校等に出席することはできません。

リンゴ病

両方のほっぺたがリンゴのように赤くなってしまうことから、一般的にはリンゴ病と呼ばれるようになりました。正式には伝染性紅斑と呼ばれます。

幼児から学童期の小児の患者数が多く、ヒトパルボウイルスB19に感染(飛沫感染、接触感染)し、4~15日程度の潜伏期間を経てから発症します。両頬にりんごのような紅斑がみられるようになります。腕や足にも網目やレース様の紅斑もみられ、関節炎を起こすこともあります。紅斑が出現する前に感冒症状がみられることもあります。これらの症状は、一週間~10日程度で消えていきますが、日光に長時間曝露されると再燃することがあります。紅斑がみられる時期には感染性が低いため、学校等の欠席は必要とされていません。